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2024.11.08

“スタジアム×地域×企業”で新たな価値を生み出す!FC今治コミュニティ・コンソーシアムの「はじめの一歩」をレポート

“スタジアム×地域×企業”で新たな価値を生み出す!FC今治コミュニティ・コンソーシアムの「はじめの一歩」をレポート

FC今治コミュニティ・コンソーシアムの立ち上げ発表から一夜明けた11月5日、17人の熱き想いが集結したキックオフイベントが、アシックス里山スタジアムで開催されました。

コンソーシアムという大きな船に乗りあわせた、多様なバックグラウンドを持つ企業の皆さん。そんな彼らは、スタジアムを起点に、どんな未来を創り出していくのでしょうか?

この記事では、熱気に包まれたイベントの様子をお伝えします。開催にまつわる背景や想いは、こちらの記事もご覧ください。

企業の枠を超えて、ともに今治の未来を考えるプロジェクト

この日、FC今治コミュニティ・コンソーシアムのメンバー17人が、アシックス里山スタジアムのクラブハウスに集まりました。

ランダムに割り振られた4つのグループに分かれ、少し緊張した表情で、各自用意された席に着くと、コミュニケーションディレクターの二宮敏さんが話し始めました。

「今日は、企業の枠を超えて、一人ひとりが『こんなことできるんじゃないか』『やってみたい』そんな思いを共有する場にしたいと思います」

実は1年以上も前から毎週のようにオンラインで集まり、「FC今治コミュニティ」について議論を重ねてきたメンバーたち。しかし、企業人としての立場がどうしても優先され、組織を超えてつながり、一人ひとりが自由にアイデアを出しあう機会はありませんでした。

二宮さんは続けます。

「企業として何ができるかももちろん大切ですが、多様な人々が集まることで生まれる、良い意味でのカオスな状況が『FC今治コミュニティらしさ』でもあると思っています。今日はぜひ企業や所属といった鎧を脱いで、一人ひとりの柔軟な発想で、未来について語り合いましょう」

その後、メンバー一人ひとりに自己紹介の時間が設けられました。企業の代表としての立場を一旦脇に置き、「地方への関心」や「今治とのつながり」「サッカーとの接点」など、それぞれの個人的な背景に焦点を当てたスピーチが続きます。それぞれの言葉から、実に多様な価値観や熱い思いが伝わってきて、会場の雰囲気は次第に温かいものへと変わっていきました。

スタジアムが起点に、地域とつながる 福祉施設「きとなる」の取り組み

お互いが打ち解けたところで、いよいよワークショップがはじまります。

まずはスタジアムの日常的な様子を知ることで、今後の活動のヒントを掴んでもらおうと、複合福祉施設「コミュニティビレッジきとなる」の活動についてお話をお聞きしました。

2023年1月に完成したアシックス里山スタジアムは、ホームゲームの開催だけでなく、試合がない日にも様々なイベントを実施したり、カフェやドッグランを設けたりするなど、地域の人々が気軽に集える場所となっています。

なかでもスタジアム内に拠点を構える「きとなる」は、障がいのある方や発達にでこぼこのある子どもたちが、地域の人々とともに成長できる場所として、人との関わりや新しいつながりを生み出しています。

社会福祉法人来島会の大沢麻紀子さん

「『きとなる』は、あえて多くの人が訪れるアシックス里山スタジアムの中に作りました。 閉鎖的なイメージを持たれがちな福祉施設ですが、地域の人々と触れ合えるスタジアムのな かにあることで、障がいのある方や発達にでこぼこのある子どもたちが、社会の一員として 生きていくための貴重な経験を積むことができます」

「きとなる」では、スタジアムという立地を生かし、地域の人々との交流を深めています。朝活でのスタジアム周辺の清掃活動や、通りがかった人や訪れた人が誰でも気軽に参加できるイベントの開催、ホームゲームに合わせた施設開放などを通じて、多くの人々が集まり、自然な形でつながりが生まれています。

こうした活動を通して、必要な人がサポートを求めやすくなり、居場所を見つけるきっかけにもつながっています。

大沢さんは、「多様な人々がつながりを持つことは、誰もが生きやすい社会を作ることにつながる」と強調します。

大沢さんの話に耳を傾けた参加者からは、「障害者と高齢者を分けるこれまでの考え方を見直す必要があると感じた」「様々な人が共存できる社会を実現したい」「当事者の方が抱える不安や悩みは、これまであまり想像したことがないものだった。接点を持つことの大切さを感じた」など、様々な声が聞こえてきました。

参加者一人ひとりが、自分自身の考えや価値観を見つめ直し、コミュニティのあり方を考えるきっかけになったようです。

多様な視点が交差するワークショップ

「きとなる」の事例もヒントにしながら、いよいよワークがスタート。FC今治コミュニティ・コンソーシアムの現状や未来について、ありのままの思いをアウトプットしていきます。

「今治という街は、その産業や人口規模から考えると、まだまだ大きな可能性を秘めている」「エラー&ラーンで失敗を恐れずに、新しいことに挑戦していく機運が感じられる」「FC今治が10年の歴史を積み重ねてきたことで、より実践的な活動ができるようになった」など、参加者からは、街のポテンシャルやコンソーシアムの強みについて、ポジティブな意見が多く聞かれました。

一方で、「共助のコミュニティというビジョンの具体的なイメージがまだ共有できていない」「孤立したコミュニティにならないためには」「複数の企業が足並みをそろえることの難しさ」など、それぞれが感じている不安や課題感もポツリポツリと明らかに。

その後、参加者はチームに分かれ、コンソーシアムの未来をどのように創っていくかについて、議論を深めました。どのチームからも活気あふれる声が聞こえ、参加者全員が一体となって、コンソーシアムの未来を描き出すことに集中していました。

最後に、各チームが考えたアイデアを発表しました。

「例えば、FCI生が企業ゼミで製造したみかんジュースをホームゲームで販売する。FC今治を応援している、FCI生を応援している、地域に貢献したいという思いがある人からは、そのストーリーに定価以上の価値を見出してもらえるかもしれない。購入者も、美味しいジュースを味わう喜びに加え、地域貢献を実感できる。これはコミュニティにおける新たな収益モデルのデザインで、いわば究極の『推し活』ともいえる。応援する喜びを経済活動に繋げ、地域経済を活性化させることができるのではないだろうか」

「コミュニティのメンバー同士が、例えば『今から一緒に走りませんか?』と気軽に声を掛け合えるような、コミュニケーションのインフラを整備することで、コミュニティの中でも自発的に関係性が生まれるのではないか」

「目指す社会の具体的な姿が明確になっていないため、まずはビジョンを共有し、より具体的に合意するプロセスが必要だと思う。しかし組織が大きいだけに、それぞれの具体的なタスクに落とし込むと、全体の目標を見失ってしまう可能性もある」

「スタジアムが丘の上にあるため、駅周辺や市街地などより多くの人が集まる場所にサテライト施設を作り、サッカーや里山エリアの魅力を発信することでファンを増やすのはどうか。同時にコミュニティの価値を数値化することで、企業への貢献が数値で示せるような仕組みを作ることが、お金を動かすためには必要ではないか」

それぞれがフラットな立場で参加したワークショップ。どのチームも企業の枠にとらわれず、多様な視点から意見やアイデアを出しあいました。

共助のコミュニティにづくりへ、はじめの一歩

ワークショップを終えた参加者に「プロジェクトの前進には、互いの意見をぶつけ合うことが何より大切」と伝えた二宮さん。

「私たちが目指す『共助のコミュニティ』というビジョンは、とても大きなものです。実現に向けて、たくさんの課題や苦労もあると思います。でも難題から逃げずに取り組んではじめて、足元の活動が積み上がり、ビジョンに近づくことができます。コンソーシアム一丸となって、一歩一歩活動を積み重ねていきましょう」

そんな二宮さんの力強い言葉で、ワークショップは幕を閉じました。

この日はじめの一歩を踏み出した、FC今治コミュニティ・コンソーシアム。今後も活動の様子を、お届けしていきます。

取材 / 小林友紀(企画百貨)