FC今治ボランティア「Voyage」が語る、「私たちが週末、スタジアムに集まる理由」
大人から子どもまで、多くの人が集い賑わうアシックス里山スタジアム。試合日の熱気溢れる空間の裏側には、白と青の爽やかなウェアに身を包み、笑顔で観客を迎えるボランティアスタッフ「Voyage(ボヤージュ)」の存在があります。
「ボランティアなんて、サッカーにめちゃくちゃ詳しい熱狂的なファンがやるものでしょ?」
もしそう思っているなら、それはちょっと違うかもしれません。
今回は、年齢も普段の仕事もバラバラな3人に、Voyageの魅力を座談会形式でたっぷりと語り合っていただきました。

今回お話をうかがったメンバー

高橋哲志さん
(西条市在住)Voyage歴も長い頼れる大ベテラン。Jリーグ発足当時からのサッカー好き。

平野千秋さん
(今治市在住)今シーズンから参加。普段は子ども向けの体育教室を自営。お子さんやお孫さんと一緒にスタンドでの観戦も楽しむ。

西原凌矢さん
(今治市在住)今シーズンから参加した24歳の若手会社員。ご両親を巻き込んで、家族みんなで活動中。
それぞれの「不純(?)で純粋な」きっかけ
──今日はよろしくお願いします。まずは皆さんがVoyageに参加されたきっかけを教えてください。
西原さん:
僕は一昨年、友人に誘われて初めてスタジアムでナイターゲームを観戦したんです。それまでサッカーへの興味はほとんどなかったんですけど、勝った瞬間のスタジアムの一体感に一気に圧倒されて、完全に沼にハマってしまって。
そんな以前の僕の休日は自宅で過ごす日々だったんですけど(笑)。もともと学生時代に「たくさんの人で一つの作品を作る」イベント業界に興味があったことも思い出して、スタジアムを支える側として関わってみたら面白いかもと応募しました。

平野さん:
正直に言えば、私の動機は不純なんですよ(笑)。私は昔からスポーツをするのが大好きで、FC今治もJFLの時代から応援してきました。ある日、選手たちが自分でおにぎりを握ってくれる最高のイベント(「FC今治米を食べよう!Voyage交流会」)があるのを知って。「行きたい!」と思ったら、参加条件が『Voyage会員限定』だったんです。「これはもう、やるしかない!」とおにぎり目当てで登録しました(笑)。
一同:(笑)
平野さん:
ただ、Voyageの存在自体は知っていたものの、ずっと「ボランティアをしたら試合が観られないんじゃ……」と思い込んでいたんです。そしたら案内をよく読むと「試合観戦もできる」と書いてあって。「あ、観戦を諦めなくていいんや!」と気づいてからは早かったですね。それなら自分にも無理なくできるなと思って、今シーズンから飛び込みました。
──なるほど(笑)。思い込みが解けたわけですね。そんなお二人を、大ベテランの高橋さんはどう見られていますか?
高橋さん:
きっかけは何でもいいんですよ(笑)。こうやって仲間が増えてくれるだけで最高にありがたいですから。私は今のアシックス里山スタジアムができる前の、夢スタ時代からやっているので、歴はもう10年になりますね。
Jリーグ発足当時からのサッカー好きなんですけど、地元の近くにプロのクラブができたとき、「せっかく近くにあるんだから、裏方としてもっと深く携わってみたい」と思ったのが始まりでした。

裏方だからこその特権
──実際にVoyageの皆さんは、スタジアムでどんな活動をされているんでしょうか? タイムスケジュールや役割分担が気になります。
平野さん:
活動の枠が「試合前日」と「試合当日」、そして「試合後」に分かれていて、私は前日のスタジアムのお掃除や、当日の開門から試合開始直前までの準備をすることが多いです。
入場ゲートでチケットをチェックしたり、サンプルをお渡ししたり。試合が始まる10分前くらいには「申し訳ないな」と思いつつボランティアを抜けて、スタンドから家族と一緒に全力で試合を観戦しています。

西原さん:
僕は平日は会社員として働きながら、「あ、明日準備あるな。じゃあ仕事終わりに行こうかな」という感じで、活動を週末の選択肢に入れています。当日は主に試合が終わったあとの客席の片付けを担当しています。
高橋さん:
今はVoyageの人数も着実に増えてきているので、お二人みたいに自分の生活に合わせられるのが いいところですね。ポジションも多岐にわたっていて、ゲートでの接客担当もあれば、スタジアム内の案内、バックヤードでの作業など、本当にたくさんあります。だから「人と喋るのがちょっと苦手だな」という人でも、黙々と進める作業ポジションがあったりするので、実はどんな人でも活躍できる場所なんですよ。
あ、私は試合中も含めてほぼ終日スタジアムのどこかにいます(笑)。
──実際に中に入ってみて、Voyageだからこそ体験できた面白さはありますか?
高橋さん:
本当にいろいろな役割にチャレンジさせてもらえるところですね。過去には、FC今治レディースのなでしこリーグの試合であの「大型ビジョン」の操作を担当させてもらったこともあります。普段なら絶対に触る機会のない裏側のマシーンを動かせるのは、めちゃくちゃ貴重な経験でした。クラブからの「任せたよ!」という信頼がダイレクトに感じられるのも嬉しいんです。
平野さん:
私は前日の「椅子拭き」の作業が好きです。ピッチには誰もいない静かなスタジアムで、色々な席に座りながら「ここからはピッチがどう見えるかな?」と確認できるんです。おかげで「メインスタンドの〇列目は手すりが少し被るから、今度友達を誘う時はあっちの席にしよう」といった、めちゃくちゃコアな知識が身につきました(笑)。
西原さん:
試合後の片付けも、スタッフさんの指示をただ待つんじゃなくて、みんなで「次はあそこや」と先を読んで自主的に動いていく。一つの大きなイベントを自分たちの手で段取りよく作り上げ、そして綺麗に収めていくプロセスそのものに、他では味わえないやりがいを感じています。「自分もこのスタジアムを作る一員なんだ」って、毎回すごく実感できますね。

地域のクラブを背負う「誇り」と「責任」
──試合後の片付けは、チームが負けてしまった日は精神的にも大変ではないですか?
西原さん:
確かに、負けた日はみんな「あぁ、悔しいなぁ……」って、やっぱりちょっと落ち込んでいます(笑)。お互いに「今日のあの失点はさぁ」とか「あのプレーはこうだったよね」なんて、手は動かしながらも、熱い反省会がどこかで始まったりして。 でも、試合が終われば片付けという現実は絶対にやってきます。そこはみんな切り替えてますね。
それは、やっぱりこの今治という小さな街にプロのチームがあって、毎週末みんながスタジアムに集まって一喜一憂できること自体が「当たり前じゃない」と、みんなが心のどこかで分かっているからだと思うんです。地元にクラブがあることが誇らしいし、ありがたい。だからこそ、自分たちもチームの一部としての思いが染み付いているんですよね。
──ボランティアという枠を超えて、強い当事者意識を感じますね。
高橋さん:
それは常に意識していますね。スタジアムに来られるアウェイのサポーターや、初めて来られた一般のお客さんから見れば、私たちがボランティアだろうが何だろうが関係なく、「FC今治の人」として映るわけです。だから、もし私たちが何か変な振る舞いをしてしまったら、即座に「FC今治の、今治の街のイメージ」に迷惑がかかってしまう。その自覚と責任感は、活動を始めた最初の日からずっと思ってやっています。
平野さん:
そういう高橋さんたちベテランの方の背中を見ていると、本当に頭が下がる思いです。遠路はるばる遠いところから来てくださった対戦相手のサポーターの方に、「遠いところをお疲れ様です!今治へありがとうございます!」って、ごく自然に、温かい声をかけていらっしゃる。そのおもてなしの姿勢を見るたびに、新入りの私は「すごいなぁ、格好いいなぁ」っていつも学ばせてもらっています。

世代を超えた繋がり
──Voyageの活動を通じて、ご自身や日常に何か変化はありましたか?
高橋さん:
普段はものづくり系の仕事をしているので、Voyageを始めるまでは「自分に接客業みたいな仕事ができるんかな」という漠然とした思いはありました。でも、思い切ってやってみると楽しいし、「あ、自分でもできるんやな」って。年齢を重ねてから、自分の新しい一面や可能性を見つけられたのは嬉しかったですね。
それに、私は西条住まいなので最初は今治の知り合いがゼロだったんです。それが今では、街中で声を掛け合える仲間がたくさんできました。現役の高校生からシニアまで幅広い世代がいますし、色んな経験をしてきた人が集まっているので、すごく刺激をもらえます。今ではVoyageの仲間同士で、時々スポーツパークに集まって一緒にサッカーをするような関係にまで発展しているんですよ。
平野さん:
私は普段、子ども向けの体育教室をしているのですが、入場ゲートに立っていると、かつて関わった子たちが入ってくる姿を見かけるんです。「あぁ、大きくなったねぇ」ってお母さんと話したりしていると、胸が熱くなります(笑)。普通に街で暮らしているだけだったら見落としてしまうような再会がありますね。
──まさに、スタジアムが色んな人の「目的地」になっているからこその再会ですね。
平野さん:
本当にそうですね。実はVoyageの活動中に、高校を卒業して以来、なんと「47年ぶり」に同級生と再会したんです! 向こうがゲートから入ってきたときに、「あれ!?」って声をかけてくれて。お互い毎試合スタジアムに来ていたことが分かって、嬉しくてハーフタイムにメインスタンドのあたりで待ち合わせして話し込んでいたら、スタッフさんに「通り道なので避けてください」って叱られてしまいました(笑)。
高橋さん:
(笑)。私も何十年ぶりに友達と再会しました。ただ普通に生活していたら一生すれ違っていたかもしれないのに、「FC今治を応援する」という共通の目的があるからこそ、何十年という時間を超えてまた繋がれる。スタジアムって、不思議で素敵な場所だなと思いますね。

これからのスタジアムに願うこと
──最後に、皆さんにとって「Voyage」とはどんな存在ですか?また、今後どのような場所にしていきたいですか?
平野さん:
私にとっては、応援活動の延長であり「普通のサポーター活動の一つ」です。気負わずに、自分の行ける時間に参加できる自由さがあります。「ボランティアをやると試合が見られない」と思っている人がいたら、「全然そんなことないよ、一回やってみて!」と伝えたいですね。
西原さん:
僕にとっては「みんなで一つの大きな作品を作る」、そんな実感が持てる場所です。実は会社の都合で、近々今治から高松へ引っ越すことが決まったんですよ。でも、家は今治に残すので、週末に試合があるときは土曜日からこっちに泊まり込んで、意地でもVoyageを続けます!(笑) それくらい、僕の生活には欠かせない場所になりました。
今後は僕と同年代の20代社会人メンバーももっと増えてほしいです。地元の高校生たちとも連携を強めて、若い世代の力でもっとこのスタジアムの運営をガシガシ支えていけたら最高ですね。
高橋さん:
私にとってVoyageは、日々を元気に生きるための「精神安定剤」であり「ビタミン剤」です。仕事で疲れた心も、ここで色々な人と触れ合い、声を掛け合うことで、翌日には心地よい高揚感に変わっています。チームから「もう来なくていいよ」と言われるまで、ずっと現役で続けたいですね(笑)。
アシックス里山スタジアムが、これからも今治や近隣の人が自然と集まり、笑顔になれる目的地であり続けてほしいと願っています。

サッカーのルールに詳しくなくても、「週末にちょっと仲間と過ごせる居場所がほしい」「普段会えない世代の人と喋ってみたい」「あのスタジアムの熱気の一部になってみたい」──。そんな小さなキッカケから始まった市民の輪が、今やスタジアムを動かす大きな原動力になっています。
「支える側も、チームの一員」
Voyageの温かい一体感こそが、FC今治コミュニティの目指す「人と人が繋がり、支え合う豊かさ」の、ひとつの答えなのかもしれません。
もし、あなたの週末の選択肢に「Voyage」が加わったなら、そこにはきっと、スタンドから見るだけでは味わえなかった新しい景色と、素敵な出会いが待っているはずです。
FC今治コミュニティ 編集部
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⚓️ FC今治ボランティアスタッフ(Voyage)説明会実施のお知らせ
この度、7月29日(水)と8月2日(日)にVoyage説明会を実施いたしますのでお知らせいたします。
今回の説明会では、Voyageの活動内容や申込方法などを説明します。
まだ一度もVoyageの活動に参加したことがない方、数回参加したことがあるがもう少し詳しくVoyageの活動を知りたい方向けの内容となります。
また、より多くの方にご参加いただけるように、平日の夜と休日の日中の2回開催しますが、いずれも同じ内容ですので、ご都合のよい日程でぜひご参加ください。
https://www.fcimabari.com/news/m3c0zst_f821