2026.07.21

「迷惑かけちゃいけない」を、ここで脱ごう。音が響き、人が混ざりあう。アシックス里山スタジアム『TINY GARDEN 小さな音楽祭』

大人から子どもまで幅広い世代が集い、365日のにぎわいが生まれる場を目指す「アシックス里山スタジアム」。その一角にある、里山サロンの裏庭「TINY GARDEN by URBAN RESEARCH」で、「小さな音楽祭」が開催されました。

実は、開催直前まで台風の影響で、「本当にお庭で開催できるだろうか……」と、スタッフ一同、天気予報を見つめながらハラハラしっぱなしだった今回のイベント。しかし当日は味方してくれた空の下、美しいピアノと、陽気な打楽器の音色に包まれる1日となりました。

今回は、イベント当日の様子を振り返りながら、企画に携わった市内で今治ホホホ座を主宰する豊嶋吾一さん、ピアニストであり里山サロンスタッフでもある渡部響子さん、そしてURBAN RESEARCHの高橋浩子さんにお話を伺いました。そこから見えてきたのは、音楽を通じて人と地域が自然と繋がり合う、今治の新しい可能性でした。

今回お話をうかがったメンバー


豊嶋 吾一さん

今治の市街地を拠点に、音楽イベント「ハズリズム」の主宰や「今治ホホホ座」などのカルチャー発信・賑わいづくりを手掛ける。FC今治とはホーム戦での演奏を手がけてもらうなど、長い付き合い。



渡部 響子さん

香川県高松市出身。10年前より今治市内にてピアノ教室「ミュージックルームひびき」を主宰。「世の中も人も音楽でもっと豊かに」をモットーに地域活動にも注力。里山サロンのスタッフ、そしてFC今治の熱きサポーターでもある。



高橋浩子さん

FC今治と共にこの「TINY GARDEN 小さな○○」の場を主宰するURBAN RESEARCHのスタッフ。


🎤 雨上がりの庭、思い思いの特等席で

雨が上がった「TINY GARDEN by URBAN RESEARCH」。イベントは12:00、ランチタイムの始まりとともに幕を開けました。

まず里山サロン内、そして広々とした裏庭に響き渡ったのは、渡部響子さんの奏でる優しいピアノの音色。

レジャーシートに座ってランチを頬張る人、冷たいドリンクやこの日限定の特別なスコーンセットを片手にただぼーっと風を感じる人、滑り台で歓声を上げてはしゃぐ子どもたち。さらには、心地よい音色に誘われるようにして、犬の散歩途中の地域の皆さんもふらりと集まってきます。

午後になり、今治を中心に活動するスティールパンバンド「minamo」が登場してドラム缶から生まれた透明感のある陽気な音が響き渡ると、子どもたちも大人も自然と体が動き出します。

後半には「ひだまりジュニアコーラス」の歌声が花を添え、フィナーレは参加者全員での大合唱!誰もが思い思いの楽しみ方で溶け込める空間の心地よさが、この場所には満ちていました。

🎤 音楽は本来、もっと自由なもの。型にハマらない空間で見つけた温かさ

──渡部さんはピアノ教室を主宰される傍ら、里山サロンのオープン当初からスタッフとしても働かれているんですよね。今回の演奏のオファー、どんな想いで引き受けられたのでしょうか?

渡部さん:
そうなんです。プライベートではサッカーをしている子どもと一緒にFC今治のサポーターでもあるので、大好きな里山サロンで「人が集う場所づくりに、何か貢献できるならぜひ!」と快諾しました。以前も一度、店内で演奏したことはあったのですが、やっぱり外の空気は違いますね。

クラシックのピアノって、どうしても「真面目に静かに聴かなきゃいけない」「聴きに行くにもドレスコードがある」といった堅苦しいイメージを持たれがち。演奏する側も、普段は防音に気を使ったり、閉鎖的なスタジオにこもったり……。でも、ここではすべてがオープンなんです。

──確かに、外で子どもたちが遊び、ワンちゃん連れが通り抜ける中でのピアノ演奏は新鮮でした。

渡部さん:
普段のコンサートでは、お客様に対して横を向いて演奏することが多いんです。でも今日は、すぐそこでみんなの顔が見える距離と向きで演奏できた。だからこそ、お客様や常連さんたちが作ってくれる空間の温かみをダイレクトに肌で感じることができました。

みなさん好きなことをしているけれど、なんとなく音楽がこの場所を繋いでいて、どこか一体感がある。本来、音楽ってもっと自由なもの。そんな本質に帰れる場所になったのかなと感じています。「あぁ、音楽ってこれでいいんだな」って。

──最後は参加者みんなで大合奏になりました。

渡部さん:
みんながひとつになって合唱してくれたのが何よりもうれしかったです! 普段サロンで働いている日常とは全く違う、この場所の新しい可能性を強く感じました。

「ここでは周りに迷惑をかけちゃいけない、と気負わなくていい」

そんな風に、みんながちょっとだけ羽を伸ばせる場所になったらいいですよね。そう考えると、普段は静かにしなきゃいけない「図書館」をテーマにしたイベントも相性がいいかも。今度はこの外の自由な空気の中で、本を読んだり、紙芝居や音読をしても面白いかも!なんて、新しい妄想がどんどん湧き出ています(笑)。

🎤 スタジアムの持つ「安全な広場」としての可能性

──普段は「今治ホホホ座」など、市街地のカルチャー発信や夜のイベントを中心に活動されている吾一さんから見て、この「昼の里山スタジアム」という空間はどう映りましたか?

豊嶋さん:
僕らが普段街中でやるイベントとは、来ているお客さんの層が全然違うのが面白いですね。今日ワークショップに参加してくれた人たちも、ほぼ全員が「はじめまして」の方ばかり。

親子向けの音楽イベントって、一歩間違えるとすごく「素朴なコンサート」になりがちで、逆に格調を高くすると「子どもお断りの高尚なもの」になってしまう。僕がずっとやりたいのって、その『ちょうど真ん中の、どちらもにとって居心地がいい空間』なんです。こだわり抜いた大人のカルチャーなんだけど、子どもたちがわちゃわちゃ混ざっていても全然OK、という空気。

街中だとそういうことをやりたくても道路使用許可の手続きとか色々大変なんですけど(笑)、そういう敷居がなくて、最初から「安全な広場」として開かれているのは、スタジアムならではの圧倒的な『余白』だなと感じます。

──ここの場所を使って、吾一さんが「仕掛けたい妄想」があればぜひ教えてください。

豊嶋さん:
以前僕らが手がけている「ハズミズム」でもお呼びしてめちゃくちゃ盛り上がったんですけど、野外ステージにどデカいスクリーンを張って、みんなで物語を作る「影絵のワークショップ」をやる影絵師の方がいるんです。あれをこのスタジアムの夜の裏庭なんかでやったら、絶対に今治の子どもたちも大人もひっくり返るくらい面白い空間になると思います。

僕らの役割って、普段みんなが日常では触れないような「まだ見ぬおもしろい音楽やカルチャー」のチャンネルにピッと繋げてあげることだと思っていて。僕らがここに来ることで、普段そんなに音楽やカルチャーに興味がないスタッフやサポーターの方々にも、また違った視点やチャンネルを開くきっかけになれば嬉しいです。

FC今治さんや「TINY GARDEN FES」とも、お互いのやりたいことの面白い落としどころを見つけながら協力し合うことで、さらに新しいカルチャーの「ごちゃまぜ」を仕掛けていきたいですね。いい相乗効果が生まれるはずです。

🎤 外から呼ばなくても、ここに「最高の音楽」があった

──高橋さん、無事に雨が上がって大盛況で幕を閉じました。URBAN RESEARCHがプロデュースするこの「TINY GARDEN」の視点から、今回の小さな音楽祭を振り返っていかがですか?

高橋さん:
最高でしたね。実は、私たちのブランドの原点でもある長野県の「TINY GARDEN 蓼科」でも、定期的に音楽家やアーティストを招いたイベントを開催していて、ブランドとして『音楽は空間づくりに欠かせない、大切なもの』だとずっと考えてきました。

ただ、今回今治でやってみて大きな気づきがあったんです。それは、わざわざ遠くから有名なアーティストを呼ばなくても、地元にこんなに素晴らしい音楽や、一緒になって場を盛り上げてくれる地域の人たちがいるということ。minamoさんの陽気な音色や、響子先生が率いる合唱団の子どもたちの歌声、そして何より、それを見守る保護者の皆さんや地域の方々が一緒になってあの空間を楽しんでくれている姿を見て、本当に嬉しかったですし、胸が熱くなりました。

──今回は、「スタジアムに来たことがないよ」という方や、犬の散歩途中の市民の皆さんも集まっていました。

高橋さん:
まさにそれが一番嬉しかったことですね。「スタジアムがあるのは知っていたけれど、実は中に入ったのは初めて」という声も多く聞かれました。サッカーに限らず、音楽でも、あるいは他のテーマであってもいいんです。普段スタジアムに足を運ぶ機会がない人が、ここへ来るキッカケになったら。

「初めて来たけれど、なんて気持ちのいい場所なんだろう」と感じてもらって、日常的にふらっと立ち寄る繋がりにしていきたい。ここには、誰でも、いつ来ても「自由に使える、自由に過ごせる広場がある」ということに、もっと多くの今治の人たちに気が付いてもらえたら嬉しいですね。

これからの里山スタジアムが目指す場所

雨上がりのアシックス里山スタジアムに響き渡った、心が弾む音楽。

サッカーがある日も、ない日も。ここには、私たちの日常を少しだけ豊かにしてくれる、新しいきっかけの芽が育っています。

「ここでは周りに迷惑をかけちゃいけない、と気負わなくていい」 「自由に使える、自由に過ごせる広場がある」

そんな風に、みんながちょっとだけ羽を伸ばせる場所を目指して。次はどんな「小さな〇〇」が、この庭で生まれるのでしょうか。どうぞお楽しみに!

FC今治コミュニティ 編集部  
小林友紀(合同会社企画百貨)